理不尽という言葉がある。
道理に合わないこと、無理難題を強いられることという意味がある言葉である。
例えば、一人で家でお酒を飲んでいて飲み過ぎて酔っぱらってしまった。
これは自業自得である。
しかし「お前も飲め!」と鉢に日本酒を注がれたサボテン。
サボテンにとっては理不尽であると言えよう。
当の本人にとっては、こんなに美味しい物を飲めるサボテン・・・世界中を見てもこんなに幸せなサボテンはおるまいてと思っていたのだが、如何せん酔っぱらい。
全く酒の力とは恐ろしいものである。
心なしか真っ赤に染まったように見えるサボテン。
次の日にサボテンを見てみると二日酔いになったのか多少元気が無かったが、まだ元気に緑色を保っているので一安心だ。
さて、先日或る不思議な出来事が起こった。
一年も師走に入り冬の気配をようやく感じるようになってきた日の夕暮時には、露天風呂が気持ちいい。
身を震わしながらいつもの風呂屋に行ったときの話である。
風呂屋に付き受付で券売機でチケットを買おうとしたら、いつも持ち歩いている会員カードがないことに気付いた。
思えばこの辺りからすでに変だったのかもしれない。
失くしたのかもしれないな・・・再び会員登録を済ませて券を買い脱衣所に入った。
いつもの脱衣所、いつものロッカー、いつもの爺ちゃん。
何の変わりもないいつもの風景である。
服を脱いで浴場へ行こうとすると体重計が目に入る。
久しぶりに計ってみるかと思ったら、浴場からオッサンが出てきて体重計に乗り溜め息をついて降りた。
それに続き体重計に乗り数値を見る・・・。
・・・(A`
溜め息をついて降りた。
オッサンと全く同じ行動をしている自分にハッ!となりもう一度溜め息をついて、浴場へ向かおうとしたら驚愕の光景が目に入った。
目の前で服を脱いでる爺ちゃん・・・下半身が露わになっている爺ちゃんの尻から何か白い物が・・・。
一瞬妖怪の一反木綿かと思ったがトイレットペーパーであった。
【祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす】
理不尽である。
今の日本の土台を築いた功労者が、何故風呂屋で尻からトイレットペーパーをぶら下げなければならないのか。
老いなどではない。
戦後日本の復興に力を尽くした英雄は威厳と尊厳に満ち溢れていないといけないのである。
このままではいけない・・・。
トイレットペーパーを引きずりながら浴場に入っていった爺ちゃんを追うも、既に爺ちゃんは掛け湯を済ませてトイレットペーパーは綺麗すっかり流れて消えてしまっていた。
堂々と歩き洗い場へと向かうその後ろ姿を見て思った・・・君に幸あれ。
ということで、今年もあと僅か。
終わりよければ全てよしと言いますし、皆様も残りの日も充実して過ごせますように。
幸あれ。